ショッピングセンターの開発・運営において、商圏分析は欠かすことのできない業務です。
今日、データを収集することはとても簡単になりました。しかし、一方でデータをいくら集計してみても「結局、何が言えるのかわからない。マーケティングの施策につながらない。」という声もよく耳にします。
消費行動の変化の激しい昨今「地域単位で消費者心理が理解でき、施策にもつながる」ジオデモグラフィックスを用いた商圏分析の手法を、ショッピングセンターと商圏分析の歴史を紐解きながらご紹介します。
日本初のショッピングセンター玉川高島屋S・C(東京都世田谷区)が誕生したのは1969年で、日本はまさに高度経済成長真っただ中、三種の神器といわれる冷蔵庫、洗濯機、テレビの普及率が80%を越える時期と重なります。
当時、米国での自動車普及率は80%近くありましたが、日本ではまだ20%でした。日本で自動車保有率が8割に達したのは20年後の1990年です。この時差を利用し、米国で流行ったショッピングセンタービジネスを輸入することによって日本の郊外型ショッピングモールは大いに発展しました。
この発展に合わせて、商圏分析は人口増加エリアやまだ自社の店舗が出店していない空白地を探す手法としてショッピングセンター業界に広く浸透していきました。
日本初のショッピングセンター誕生から約半世紀が経過し、2018年には日本国内のスマートフォンの普及率が80%を超えました。なにかが80%以上普及すると、生活習慣が大きく変化します。
スマートフォンの普及により、これまでのようにマスを捉えるマーケティングの施策が難しくなってきたのはご存知の通りです。商圏分析においても商圏の質の多様化とそれに伴う需要の変化を把握することに軸足が動いてきています。
そして、簡単に「質」をとらえる商圏分析の手法として、「ジオデモグラフィックス」の活用が着目されています。
国勢調査などで公開されている統計情報と独自に調査した市場調査(アンケート調査)から居住地域の類似性に基づき分類したものを「ジオデモグラフィックス」と呼びます。なお、「ジオデモグラフィックス」は地理(ジオ)と人口統計(デモグラフィックス)の二つのことばを合成して生まれた言葉です。
後者の人口統計とは性別、年齢、職業、収入、家族構成など個人や集団を特徴づける属性情報のことを指しており、これに住所データが結びついて地理的情報が加味されたものが「ジオデモグラフィックス」となります。
5年に一度実施される国勢調査は全数調査の国家統計として、商圏分析の基礎データとして利用されてきましたが、人口・世帯数・家族構成・住宅の種類・所属する産業分野など項目数が多岐に渡るため、データを直感的に理解することが困難でした。
そこで、ライフスタイルとライフステージの観点で分類した「ジオデモグラフィックス」の活用が進んできています。当社が作成しているGeodemo®️も直感的に利用しやすい10の大分類に分類しています。「確かにそういう人いるいる」というイメージをお持ちいただけるのではないでしょうか?
ジオデモグラフィックスを用いた商圏分析の例を見てみましょう。
玉川高島屋S・Cの小売中心地規模(半径1km圏の年間小売販売額)は約1,300億円ですが、鹿児島県の中心地もほぼ同等の規模ととなっています。そこで、玉川高島屋S・C周辺と鹿児島県の中心地をGeodemo®️で比べてみると、その質の違いは一目瞭然です。
玉川高島屋S・C周辺はグループ2「富裕層ファミリー地区」が広く分布しているのに対して、鹿児島県のマルヤガーデンズ周辺は、グループ3「市街地単身地区」、その外側にグループ8「豊かな高齢者地区」が隣接している様子がわかり、地方都市の高齢化の様子が直感的に理解できます。小売中心地規模という切り口だけでは差がなくても、商圏の質という観点で分析することで様々な発見をすることができます。
少しおおげさな例ではありましたが、同一基準で商圏を比較する手法を「商圏ベンチマーキング」といい、これは自施設の商圏を理解するためのスタート地点です。当社ではGeodemo®️を体験いただける様々なサービスをご用意しております。